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no.20
2017 10/12(木)ー 10/29(日)


R O N D O 通路と絵画  二人展  岡 芙三子・東畠 孝子
OKA Fumiko・HIGASHIHATA Takako

      




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10/14(土) PM 4〜 
 アーティストトーク




岡 芙三子
OKA Fumiko


私は物心つく頃から、自然体で生きてゆくことがベストだと考えていましたので、その続きとして絵を描いているのではないかと思います。少しばかりの自然哲学をかじり、自然の絶対を信じ、制作中は心身を自由に解き放って素材の操作に集中いたします。シンプルな手法、シンプルな画面で自分の本音を追求してゆくのですが、少しでも普遍的なものが現れることを願っております。

岡 芙三子


略歴

公募展
1965~1973 新協美術会、尼崎市展、西宮市展
1975~1983 二紀会
1998~2002 芦屋市展
西脇市サムホール展(2002年まで連続)
1998~2000 現代日本美術展/毎日新聞社主催) (2000年佳作賞)
ABC美術コンクール
吉原治良賞美術コンクール(2003年まで連続)
1999〜2002 風の芸術展トリエンナーレまくらざき
伊丹大賞展
川の絵画大賞展 (2000 佳作賞)
京展
天理ビエンナーレ
人間讃歌大賞展 (2002 佳作賞)
八王子市夢美術館開館記念公募展 (2003 奨励賞)
第1回汲美現代美術大賞展 (2004 大賞)
青木繁記念大賞公募展 (わだつみ賞)
別府アジアビエンナーレ2005
青木繁記念大賞公募展
2007, 2010 全関西美術展(いずれも受賞)
2008 アクリル美術大賞展
2009 川の絵画大賞展(加古川、東京)
2009, 2010 宝塚市展 (優秀賞) (会員推挙)

個展および個展に準ずるもの
1970年以来、東京、京都、大阪、西宮、神戸、西脇、高知、福岡などで29回

グループ展
1965年以来、日本各地および韓国で50回以上

表紙画
編集工房ノア出版の書籍の表紙絵 約30冊





東畠 孝子
HIGASHIHATA Takako


自在に形を変化させ、様々な様相を見せる時間を、粘土の性質になぞらえ「時間の可塑性」と呼ぶことにした。
直線に進み、反復し、再生する時間。
身の回りの素材から、時間や記憶の断片を掘り起こし、過去と現在が次々と滑り込む「うつわ」を作る。

東畠 孝子


略歴

1984生まれ、大阪府出身

2008 京都市立芸術大学美術学部美術学科彫刻専攻卒業
2011 ヘリット・リートフェルト・アカデミー陶芸学科卒業(オランダ、アムステルダム)

個展
2006 「ドッペルゲンガーのドッペルゲンガー」大枝の土蔵/京都
2011 「moon, river」Galerie De Witte Voet/オランダ、アムステルダム

グループ展
2006 「彫刻3回10人展」京都市立芸術大学大学会館
2007 「Art Camp 2007」ギャラリーヤマグチクンストバウ/大阪
  「CX展」ギャラリーCASO/大阪
2008 「ノート展」池坊アートコートギャラリー/京都
  「Framing, Stretching, Inside of Ceramic」Buro Rietveld/オランダ、アムステルダム
  「Gold‑rimmed Form and Image」オランダ銀行/オランダ、アムステルダム
2009 「Form and Image」オランダ財務省/オランダ、デンハーグ
2010 「Needful Things」Gallery Boris/オランダ、アムステルダム
  「Oude kerk 2010」旧教会/オランダ、アムステルダム
2011 「Made in China」オランダ銀行/オランダ、アムステルダム
  「Oude kerk 2011」旧教会/オランダ、アムステルダム 
  「polderlicht@home」リーリング邸内/オランダ、アムステルダム
2012 「Kunst RAI」アムステルダムアートフェア、ライ国際会議場/オランダ、アムステルダム
  「Amstel Park Ode」Het Glazen Huis/オランダ、アムステルダム
2013 「What(n)ever」コーポ北加賀屋/大阪
2014 「(almost) Starting Over」コーポ北加賀屋/大阪
  「雲の建物」神戸大橋第四突堤Q2ビル/兵庫
  「7 Ex-Rietveld Artists - now and then- 」Galerie De Witte Voet/オランダ、アムステルダム
2015 「40 years Gallery De Witte Voet (1975-2015)」Galerie De Witte Voet/オランダ、アムステルダム
  「Kunstschow」開催エリア内倉庫/オランダ、ゼーラント
  「Art Court Frontier 2015 #13」ARTCOURT Gallery/大阪
  「滋賀県立陶芸の森開設25周年事業:土と手プロジェクト」信楽町内倉庫/滋賀
2016 「Have the Life of Your Time」Galerie De Witte Voet/オランダ、アムステルダム
  「12のメッセージ」+1 art /大阪
2017 「Ad Hoc II – 8 Japanse kunstenaars」Galerie De Witte Voet/オランダ、アムステルダム
  「VOCA展 2017」上野の森美術館/東京

レジデンス
2010 ポッタリーワークショップレジデンスプログラム 1ヶ月間滞在制作/中国、景徳鎮
2013 滋賀県立陶芸の森 スタジオアーティスト

受賞歴
2008 京都市立芸術大学卒業制作展 奨励賞
2015 Kunstschow Award 2015







路上に一足の靴が置いてある写真をどこかで見たことがある。人が通り過ぎる通路に靴だけが立ち止まっている。偶然それを発見した人が不思議に思って写真に撮った。殆どの通行人はたいして気にせず通り過ぎたと思うが、街なかの路上に靴が揃えて置いてある光景はどこか謎めいている。通路上では思いがけない出来事が私たちを待っている。同じ靴が見る人によって不審物にも邪魔物にも謎にも見えるように。
RONDOは音楽用語で、同一のパターン(主題)が異種の旋律(エピソード)を挟んで何度も回帰するという形式を持つ。それは繰り返しながら流転する時間の流れを想起させる。時間と記憶を創作のテーマにする東畠は今回それを通路と表現した。
普遍性をテーマにする岡の絵画が置かれることで通路はどんな変容を見せるのか? 絵画とインスタレーションが融合するきわめてユニークな二人展。
+1art カワラギ 


後藤教授の鑑賞レポート

二人展RONDOにおける岡芙三子の作品のいくつかは石の表面を想起させる。人間の時間スケールを基準にとると、鉱物は永遠に変わらない「不生不滅」の象徴のような存在である。岡は制作するにあたり、自らの意志を極力排除し、蝋と絵具そしてキャンバス表面と重力が織りなす相互作用という自然現象の成り行くままに任せたという。そのようなエントロピーの増大に任せた制作行為の果てに現れた作品が、不生不滅を象徴するかのような石の表面であることは何とも不思議なことである。
一方、東畠孝子のインスタレーションは、永遠不滅の象徴のように思える岡の作品を、壁に貼ったテープと木枠で囲んでいる。その木枠は岡の作品のフレームのように見えるが、塗装も装飾もされていない。壁に対して斜めに立てかけられたままのものや、そもそも木枠が半分しかなくフレームとしての体を成していないものまである。つまり未完成品なのである。これは明らかに見る者の心の中において、完成への作業を想像させ、時間の流れや時間に対する物事の変化(時間微分)を感じさせることを目的としている。
時間に対して変化しない不生不滅という人間の希望や欲望を表しているかのような岡の作品に対して、東畠は、時間とともに刻々と変化する現象すなわち諸行無常を表すかのような表現で取り囲むことで、増大し続けるエントロピーという人間が抗うことのできない事実を、見る者に突きつけてくる。
エントロピーの増大という自然現象は生物にとっては死を意味するので、人間はそれが気に入らないらしく、何万年の前から、限られた空間と時間の中だけでもなんとかしてエントロピーの小さいものを生み出そうとしてきた。アートとはそういった人間の行為の一つなのだろう。岡と東畠による今回の二人展は、そういった事実をあらためて思い起こさせてくれる。
2017/10/14(土) 後藤英和 (大阪物療大学物理学科教授)